結論:手付金を放棄して解約できるのは「手付解除」が使える条件を満たすとき
不動産売買の手付金は、一般に「解約手付」として扱われることが多く、
- 買主:手付金を放棄して解約(=手付流し)
- 売主:手付金の倍額を支払って解約(=手付倍返し)
が可能な場合があります。
ただし、いつでも無条件でできるわけではありません。
特に次の2つで可否が決まります。
- その手付が「解約手付(手付解除できる手付)」になっているか
- 相手方が「履行に着手」する前か(+手付解除期限があるなら期限内か)
1. まず確認:あなたの契約は「手付解除」できる契約か?
売買契約書の中に、次のような条項があるかをチェックしてください。
チェック項目(コピペOK)
- □ 「手付解除」「解約手付」「手付放棄で解除」「倍返しで解除」などの文言がある
- □ 「手付解除期限(○月○日まで)」があるか
- □ 解除の通知方法(書面、内容証明など)の指定があるか
- □ 手付金が「違約金」扱いになっていないか(違約手付等の文言)
※契約書によって言い回しが違うので、「手付解除」「解約手付」を中心に探すのがコツです。
2. 手付金放棄で「解約できる」ケース
ケースA:買主が「やっぱり買うのをやめたい」
次の条件を満たせば、手付金を放棄して解約できる可能性が高いです。
- 契約書に手付解除条項がある
- 売主が履行に着手していない
- 手付解除期限があるなら期限内
例:手付解除が通りやすい場面
- まだ引渡し準備が本格化していない
- 売主側が「登記・抹消」などの具体的行動に入っていない
- 買主も中間金などを払っていない
ケースB:売主が「売るのをやめたい」
売主側も条件を満たせば、
- 手付金の倍額を支払って解約できる
という形になります。
3. 手付金放棄でも「解約できない」ケース(ここが重要)
① 相手方が「履行に着手」してしまった
これが一番多い“できない”理由です。
「履行に着手」とは、単なる準備ではなく、契約の実行に入ったと外から見て分かる段階のことです。
売主が履行に着手したと判断されやすい例
- 抵当権抹消に向けた手続(司法書士に書類を渡す等)
- ローン完済や抹消準備など、引渡しに直結する動き
- 引渡し日が迫り、移転登記の準備が具体化している
買主が履行に着手したと判断されやすい例
- 手付金とは別に「内金・中間金」を支払った(代金支払いの一部に入った)
- 引渡しに向けた具体的な支払い・手続きを進めている
「住宅ローンの事前審査を出しただけ」などは、履行着手とは言い切れないこともありますが、最終判断は状況次第です。
② 「手付解除期限」を過ぎた
契約書に「手付解除は○日まで」と書かれている場合、期限を過ぎると手付解除が使えなくなることがあります。
この場合は、手付解除ではなく「違約解除(違約金)」の話に移りやすいので注意。
③ そもそも手付が「解約手付」ではない扱い
契約条項次第で、手付が「解約手付」ではなく、実質的に違約金のような性格(違約手付)を強く持つように書かれていることがあります。
この場合、手付放棄で自由に解除できない/争いになりやすいです。
④ ローン特約で解除できると思っていたが、要件を満たしていない
手付解除とは別に、住宅ローン特約で「白紙解除」できる契約もあります。
しかし、次のミスがあると揉めます。
- 申込期限・承認期限を守っていない
- 融資希望額や金融機関が契約書通りでない
- 否決通知など必要書類が揃っていない
- 買主側の落ち度(協力しない等)を疑われる
4. 「買主が損しやすい」典型パターン(トラブル回避)
- 期限を見落としていて、手付解除できる期間が終わっていた
- 売主がすでに履行に着手していて、手付解除が封じられた
- 手付解除と思っていたが、契約上は違約解除扱いになった
- ローン特約で白紙解除できると思い込んでいたが、手続ミスで不可になった
5. すぐ使える:手付解除のチェックリスト(最短判断)
- 契約書に「手付解除」条項がある
- 手付解除期限内
- 相手は履行に着手していない
- 自分も履行に着手していない(内金・中間金など)
- 通知方法(書面等)を守れる
この5つが揃えば、手付解除が通る可能性が高いです。
6. 通知文テンプレ(買主:手付放棄で解除)
※契約書の条項番号・日付・金額はあなたの契約に合わせてください。
件名:売買契約の解除通知(手付解除)
〇〇株式会社(または売主) 御中
私は、〇年〇月〇日付で締結した下記不動産の売買契約について、契約書の手付解除条項に基づき、手付金を放棄して解除の意思表示をします。
本書面到達をもって解除通知とします。
- 物件:〇〇(所在地)
- 契約日:〇年〇月〇日
- 手付金:〇円
- 根拠条項:契約書第〇条(手付解除条項)
- 連絡先:〇〇(電話・メール)
以上
〇年〇月〇日
住所:
氏名:
7. まとめ:手付解除は「早い者勝ち」ではなく「条件勝ち」
- 手付金放棄で解約できるのは、**手付解除条項があり、相手が履行着手前(+期限内)**のとき
- 履行着手後・期限後は、手付解除が使えず、違約解除やローン特約の話に移りやすい
- 迷ったら「履行着手」と「期限」を最優先で確認し、通知は書面で残す

